Vol.12
耳よりな情報 〜在外研究員

「在外研究員」は、国立高等専門学校の教職員を海外の教育研究機関等に派遣し、先進的な研究や優れた教育実践に参画させることなどにより、教育研究能力の向上を図り、教育研究を充実させることを目的としています。
この在外研究員に、一般教養科の木本伸助教授が選ばれ、ドイツのブレーメン大学に派遣されました。研究の目的は、『現代ドイツ映画の研究とその教育実践への応用』です。昨年12月に派遣を終えた木本先生にブレーメン大学での様子をレポートしてもらいました。【最終回】


歴史的にブレーメンは、かつてのハンザ同盟を代表する町のひとつです。ハンザ同盟とは、13世紀から近世初期にかけて栄えたドイツ人商人たちによる都市同盟で、ブレーメンの他にも、ハンブルクやリューベックなどの都市が属していました。これらの都市では、今なおハンザ同盟の歴史の跡が残されており、市民生活の中にも、かつての自由都市の歴史意識が息づいています。たとえば、これらの三都市を走るクルマのナンバープレートは、それぞれHB・HH・HLです。最初の頭文字Hは「ハンザ都市」を、次のB・H・Lは都市名であるブレーメン・ハンブルク・リューベックを意味しています。つまりHBは「ハンザ都市ブレーメン」という意味になります。またブレーメンは、各州の連邦制をしくドイツにおいて、ベルリン、ハンブルクとともに都市が単独で一州をなす例外的な存在でもあります。(正確には、ブレーメンは港町ブレーマーハーフェンとともに、一州をなしています。)

こうした歴史を象徴するのが、世界文化遺産にも登録されているブレーメン市庁舎です。このヴェーザールネッサンス様式を代表する建物は、いまなお様々なレセプションなどで使用されています。私も外国人研究者のための晩餐会などで、何度か足を運びました。市庁舎の正面には、ローラント像が立っています。ローラントは市民の自由の守護者です。その両膝には突起物があり、この二つの突起の幅が、ハンザ時代にブレーメンの商取引で通用した長さの単位「エレ(Elle)」でした。

ブレーメン市庁舎

ハンザ都市には自治独立の気風があります。こうした歴史のためか、ブレーメン大学での学問上の議論にも自由奔放なところがあります。あくまでも追求すべきは学問上の真理であり、大学での立場や身分は意味をなさないということです。こうした学問の独立性の背景には、ブレーメン州政府の理解があります。それは教育行政が大学の自治と独立を尊重し、大学内では適切な競争原理が作用しているということです。それが、この大学の業績の遠因であるという声が、現場の教授たちからも聞こえてきました。ブレーメン大学は他大学と比較して予算規模が20パーセントも少ないにも関わらず、ドイツのトップ20校の一つに選ばれています。そして、すぐれた研究がおのずと教育へと還元されていくという、よい流れが生まれています。高等教育機関の研究力と教育力は比例するのです。このことは、今後、日本の大学・高専のあり方を考える上でも大切なことではないかと、私は思います。

ブレーメン大学のキャンパス 大学の授業の様子
ブレーメン中央駅 小学校の教室の様子

※木本先生は、「初級独語」「中級独語」「独語演習書講読」という3段階のドイツ語クラスの授業を担当しています。それぞれ受講学年は本科4年・5年・専攻科1年です。この他にも「ヨーロッパ思想特論」という選択科目(本科5年)を担当しています。これまで、学生の向学心と授業効率を高めるために、ドイツの映画や音楽(ポップス等)を教材化し、語学と文化を同時に学べるように授業形態を工夫しており、在外研究員での成果も授業に活かされることが期待されます。
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