平成19年度入学式校長式辞
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
桜の花や新緑の芽吹きに命の営みを感じる今日この頃、新たに本科新入生213名、専攻科生25名、本科編入学生4名、再入学生1名、留学生5名、合わせて248名の皆さんを新居浜工業高等専門学校に迎えることができますのは、教職員一同喜びとするところであり、皆さんを心から歓迎致します。 また、ご列席のご家族の皆様もさぞお喜びのことと存じます。新居浜は、別子銅山と歴史上深い関係がありますが、江戸時代の元禄4年(1691年)に開かれた最初の坑道の名前を「歓喜坑(かんきこう)」と呼ぶそうです。人々はこの将来有望な銅山の坑口に立って前途を祝福し、抱き合って歓喜したことから、この名前がつけられたそうです。皆様も本日同じような気持ちではないかと推察いたします。 ただ、何を掘り出せるかは、皆さんの今後の努力いかんにかかっております。 本日は、また、佐々木龍新居浜市長、門田憲二同窓会会長をはじめご来賓の皆様方には、年度始めのお忙しい中本校の入学式にご臨席賜り、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。 新居浜高専は、昭和三十七年に創設され、これまで、約6000名の卒業生を世に送り出して来ました。その諸先輩方が日本の高度成長期を支えてこられたわけです。 日本もバブル崩壊後の厳しい経済的苦難の時期を、ようやく民間主導の形で乗り越え、やや明るさが見えて来ました。本学の本科の卒業生に対する求人倍率も20倍を超える高いものがございます、もちろん就職率は100%です。そして、本科の卒業生のうち約6割が就職を選び、約4割が更に勉強しようと大学に進学しています。その大半は、国立大学や本校専攻科に進学しております。 したがって、新居浜高専の門をくぐられた皆さんには今後の希望により色々な選択肢があるわけです。 さて、本校は、「知恵と行動力と信頼」を教育理念とし、「学びと体験を通じて、未来を切り拓く知恵と行動力を持った信頼される技術者を育てる。」ことを教育の基本方針にしております。 まず、知恵ということですが、これを私なりに解釈しますと、「考える。」ということです。単なる知識を受け身的に学ぶということだけでなく、主体的に自分で考える。それを繰り返すことにより、いろんな疑問が湧いてきて、更に先生に疑問をぶつけていく。そうすることにより新しい独創的な考え方、知恵が生まれてくると思います。伊豆の天城の自然豊かな中に日本IBMの素晴らしい研修施設がありますが、この会社の社是が「THINK(考える。)」です。 次に、行動力ということですが、例えば、食生活ということを考えた場合に、若い人達 の食生活が乱れているということから、「食育」ということが叫ばれております。皆さんは、若いからあまり病気のことを考えたりしないでしょうが、若い頃からの積み重ねが年がいってから、現れるわけです。したがって、生活習慣病という名前がついているわけです。仮に、正しい食生活の在り方を知っていても、それを実践しないと知らないのと何らかわりがありません。 次に、日本人は、どちらかというと悲観的に物事を考えがちですが、海外に出て行くとよく分かりますが、日本の製品は、非常にすぐれて信頼されています。例えば、携帯電話は、日本のものが進み過ぎていて、世界標準になれない気さえします。また、デジカメや薄型テレビなども世界を席巻していますし、自動車や鉄道なども大変信頼されています。 これらの製品は、当然のこと人が作っているわけです。「米百俵」という言葉がひと頃話題になりましたが、この米百俵で「国がおこるも滅びるのも、町が栄えるのも衰えるのもことごとく人にある。」と教育の大切さを説いております。 高専は世間的にはあまり知られていない面がありますが、教育界や経済界など関係者の間では、高く評価されていると聞いております。 今日、遠く祖国を離れ、マレーシア、モンゴルから来られた5名の留学生の方々がいらっしゃいます。どうか寮に閉じこもらず、日本の人々と大いに交流し、日本文化も吸収していってほしいと思います。四国には、仏教のお寺八十八カ所を巡り歩く風習があります。その旅人をむかえる精神が、「お接待の心です。」おそらく皆さんを歓迎してくれることと思います。色んな課題を解決するには、地球規模で取り組まないといけないことがたくさんあります。また、時には、文化と文化がぶつかり合うこともあると思いますが、そのことにより相互理解が深まり、新たな発想が生まれてくると思います。 幕末の志士吉田松陰の歌に「親思う心にまさる親心、今日のおとずれ何と聞くらん」という歌があります。皆さんが親御さんのことを思っている以上に親御さんはあなた達のことを思っております。 どうか、期待に応えてがんばってほしいと思います。 |
平成19年4月9日 新居浜工業高等専門学校長 森 澤 良 水 |