平成20年度卒業式並びに専攻科修了式校長式辞


 ただ今卒業証書を授与された本科生187名、修了証書を授与された専攻科生23名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。教職員を代表して心からお喜び申し上げます。

 入学以来今日まで卒業される皆さんを支え、励ましてこられた保護者、ご家族をはじめご列席の関係者の皆様、本日は誠におめでとうございます。ご卒業を心からお祝い申し上げますとともに、学校に対するこれまでのご支援、ご協力に対し深く感謝申し上げます。

 また、ご多忙の中この晴れの式典にご臨席賜り、巣立ち行く若者に心からの祝福をいただきましたご来賓の皆様にお礼申し上げます。

 ところで、昨年は、日本人のブラジル移民が始まって丁度100周年に当たる年でした。

 そういうこともあって、NHKの方で「スセソ日系人の成功者」という番組を放送しておりました。

 その番組の中で、横田一家のことが紹介されていました。現在成功している兄弟の両親、父親は、埼玉県出身の洋服の仕立て屋、母親は、四国の貧しい家の出身だそうです。 この両親は、最初サンパウロの郊外の農園で労働者として働きました。奴隷のような生活だったそうです。父親は、身長150センチと小柄でしたが、60キロのコーヒー袋を誰より多く運んだそうです。

 しかし、農村地帯では、適当な学校もないので、子供を教育させるため、5年後サンパウロに移り、貧民街のビルの地下に住居を構え、ここで、父親は日本で身に付けた洋服の仕立て屋として休む間もなく、一生懸命働き、子供を学校にやりました。
 この両親の人生のモットーは、「一生懸命働く。」「子供の教育に力を入れる。」だったそうです。

 このような両親の元に育ったのが、横田兄弟です。

 兄のサトシ横田氏は、工業系の大学を卒業して、ブラジルの航空会社「エンブラエル社」に入社します。最初この会社は、大型機に取り組みましたが、外国の大手航空会社にはかなわず、多額の赤字を抱えていました。横田氏は、プロペラ機より速い中・小型ジェット機がこれから有望だと考え、そちらにシフトするよう提案しました。

 また、今まで機体の全体を作っていたのを、全体の60%を日本などの外国の会社に外注し、大幅なコストダウンに成功し、同社を世界第三位の航空会社へと成長させました。彼も同社の副社長となりました。

 弟のパウロ横田氏は、夜間の大学を卒業後、ブラジルの中央銀行の理事を務めました。

 ブラジルの日系人は、ブラジル全体の人口約億8千万人のわずか1%弱の約150万人しかいませんが、横田兄弟のようにその活躍ぶりには目を見張るものがあり、ブラジルの教科書には、「日系人移民の貢献」について記述があるほどです。

 ところで、高専の卒業生も同世代の人口に対する割合が、丁度ブラジルの日系人と同じ%弱です。しかも、2006年のOECD調査団は、「高専教育はすばらしい。」と絶賛していますし、昨年12月24日の中央教育審議会答申においても「卒業生に対する高い評価など」について言及されているなど、経済界や教育界をはじめ高専卒業生に対する評価は大変高いものがございます。

 皆さんは、高専を卒業したことに自信と誇りをもって社会や大学に船出していってほしいと思います。

 結びにあたり、今一度皆さんの未来に栄光と幸多からんことを心から祈念し、お祝いとはなむけの言葉といたします。
平成21年3月19日
新居浜工業高等専門学校長
森  澤   良  水

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