平成18年度卒業式並びに専攻科修了式校長式辞


 ただ今卒業証書を授与された本科生158名、修了証書を授与された専攻科生30名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとう。教職員を代表して心からお喜び申し上げます。

 また、入学以来今日まで卒業される皆さんを支え、励ましてこられた保護者、ご家族をはじめご列席の関係者の皆様、本日は誠におめでとうございます。ご卒業を心からお祝い申し上げますとともに、学校に対するこれまでのご支援、ご協力に対し深く感謝申し上げます。また、ご多忙の中この晴れの式典にご臨席賜り、巣立ちゆく若者に心からの祝福をいただきましたご来賓の皆様に御礼申し上げます。

 卒業生の皆さんは、この良き日を迎え、様々な思いがその胸に去来していることでしょう。喜びも悲しみもともに分かち合い、励まし合った友のありがたさ、皆さんの周りにあって慈しみの心を持って見守ってこられた方々への感謝の念、それら一つひとつの思いをいつまでも忘れないでいてほしいと思います。

 卒業は、新たな旅立ちです。これから皆さんは現実社会で世界の広さと複雑さを実感し、新しいもの、異質なものとの出会いの中でしなやかに生きていくことを学ぶことになるでしょう。経験こそは君たちを鍛える真の師であり、人間的な魅力を磨く旅に終わりはありません。どうか勇気を持って誠実にそれぞれの信じる道を歩んでいってほしいと心から願っています。
 以下、皆さんが人間として変化の激しい21世紀の社会を生きていく上で心に留めておいてほしい言葉をいくつか贈り、はなむけの言葉といたします。

 まず第1に、知識や技術に新たな命を吹き込むプロフェショナルな人間を目指してほしいということです。新しい知識や情報が社会のあらゆる活動の基盤となり、知識・技術の革新が社会の発展を支える原動力となる知識基盤型社会では、専門的な知識や技術を構造化し、社会的な課題の解決を実現できるプロフェッショナルな人材が強く求められます。
 知識や技術が陳腐化するスピードは今後益々速くなると考えられますから、プロフェッショナルであり続けるためには、学び続ける精神とともに、物事を多面的に捉え、俯瞰的な視点で本質を見つめ、複眼的に思考を深めることが何よりも大切です。皆さんには、知識や技術に新たな命を吹き込めるような本物の学びを続けていってほしいと願っています。

 第2に、自分らしさを求めて何事にもチャレンジできる人間を目指してほしいと思います。 選択の自由が尊重される社会は、チャレンジ精神と自己責任が強く求められる社会です。自ら選び取った選択の結果の如何によって後悔しないためには、他人との比較や世間での評価に煩わされることなく、自らの存在がかけがえのないものと感じられるものを選ぶ勇気を持つことが大事です。そのことによって、自分らしく生きることも、仲間たちとともに喜びを分かち合うこともできるのでないでしょうか。
 人生の転機に立ったとき、時に自らの限界を超える挑戦への勇気を持ってほしいと思います。自制心と思慮深さをもって大胆にチャレンジすれば、たとえ思い描いたほどにはうまくいかなかったとしても、多くのことを学ぶことができます。チャレンジ精神は、失敗を活かす精神によって育まれ、支えられていることを忘れないでください。

 第3に、社会に役立つ、信頼される技術者を目指してほしいということです。
 地球という有限の世界で人類の繁栄と地球環境の維持の両立を図ることが、21世紀の科学技術に課せられた最大の課題であることは言うまでもありません。しかし、現実の社会は、酸性雨、異常気象、砂漠化など地球の行く末に不安を抱かせる課題に満ち溢れています。その一方で、近年日本の企業の独善的な企業活動によって国民の安全・安心や健康を損なう事件や事故が多発していることは、誠に残念なことです。
 長年日本人が世界に誇る文化として持ち続けてきた勤勉や職人魂といった倫理観が失われつつあるのではないかと不安な気持ちにさせられます。技術者は、安全や安心に対する技術の有効さへの慎重な態度と倫理性の保持が強く要請されます。信頼される技術者を志す皆さんには、技術者の使命と誇りを心に刻んで日々の仕事に励んでほしいと思います。

 第4に、多文化共生社会に生きる人間として、共栄・共助の精神を大切にする人間を目指してください。
 政治・経済の世界に限らず文化の面にまでグローバル化の波が及んでいます。そういう時代だからこそ、日本人としての歴史や文化・伝統に誇りを持ちながら、世界の人々と心豊かに付き合っていくことが必要です。技術者の従事するプロジェクトは、今後益々国境を越え、国籍を超えるものとなっていくことでしょう。
 その時、言葉というコミュニケーションの壁ばかりでなく、文化的摩擦という心の壁をどう乗り越えていくかが問われます。中国人が好む格言に「小異を残して大同につく」というものがあります。互いに違っている所を互いに認め合いながら、いたずらに対立することなく、共通の目的のために協力し合う知恵を大いに大切にしてほしいと考えています。


 最後に、皆さんを育んでくれた新居浜高専と新居浜の地にいつまでも愛着と感謝の念を持ち続けるとともに、新居浜高専の卒業生であることを誇りとし、堂々と自らの人生を歩んでいかれるよう切に願っています。

 結びにあたり、今一度皆さんの未来に栄光と幸多からんことを心から祈念し、お祝いとお別れの言葉といたします。
平成19年3月20日
新居浜工業高等専門学校長
水      野         豊

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